182 3 温泉の水質① 佐渡の温泉の泉質 温泉も地下水から構成されており、そこに岩石や地層などから溶け出した各種イオンが反応し、様々な水質に変化します。一般的な地下水の溶存成分は、陽イオンではナトリウムイオン・カリウムイオン・カルシウムイオン・マグネシウムイオンなどで、陰イオンでは塩素イオン・炭酸水素イオン・硫酸イオンなどがあります。通常の水質は、これらの陽イオンと陰イオンの量の組み合わせで決まります。たとえば、ナトリウムイオンと塩素イオンが多ければ「Na-Cl 型」の水質と言えます。温泉の泉質も同様に、各イオンの組成によって分類されています。たとえば、Na-Cl型の温泉水は「ナトリウム - 塩化物泉」と表記されます。なお、溶存成分の総量が1,000mg/kg 以下と少ない場合には「単純温泉」と呼ばれます。 新潟県内には今から 1600 万~ 500 万年前に海底で堆積した地層が広く分布していて、化石海水(昔の海水が地層の隙間などに閉じこめられたもの。)に由来する「ナトリウム - 塩化物泉」が多く見られます。佐渡の地質もほぼ同時期に形成された堆積岩や火山岩から構成されているため、温泉も同様に「ナトリウム - 塩化物泉」が多く存在します。なお、陰イオンは塩素イオンのほかに硫酸イオンが含まれる温泉もあり、「ナトリウム - 塩化物・硫酸塩泉」、あるいは「ナトリウム - 硫酸塩・塩化物泉」も存在します。一方、陽イオンは火山地域の地下水や温泉水ではカルシウムイオンが主体になりますが、その他の地域ではほとんどがナトリウムイオンを主体としています。 多くの水質データを総覧してみるには、トリリニアダイアグラムに表示する方法が一般的です。図 4 は佐渡の温泉の水質をトリリニアダイアグラムに表したものです。この方法は、溶存成分の量は表せませんが、水質組成のグループ分けができます。図 4 に示すように、佐渡の温泉のほとんどはⅣのタイプである化石塩水・温泉水に分類されます。図 4 佐渡の温泉のトリリニアダイアグラム(同前) 佐渡の温泉
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