Ⅰといった考え方が見いだされてきた歴史があるといわれています。この調査では、 平成 23 年春に、おそらくは一生の記憶として残っていくであろう東日本大震災がありました。被災地で大きな被害を受け、困難の中から復興に向けて立ち上がり、日々取り組んでいる多くの方々に心からの敬意を表します。 このたび発刊に至った「佐渡の湧き水~貴重な自然をたずねる~」は、まさにこの 23 年春から調査に取りかかりました。この調査事業は、当財団における公益事業の一環として、中越地震、中越沖地震の二度の震災を経験した柏崎市において、災害時に身近にある湧き水が大いに役に立ったとの市民の声をお聞きしたことを契機に、平成 21・22 年度に柏崎市で取り組んだことが始まりでした。 その後、本調査事業を県内の市町村を対象に進めていくにあたり、まずは緊急時に他自治体からの給水支援にも一定の制限を想定せざるを得ない佐渡市において取り組むべきと考えました。佐渡市の協力を得て実施したこの4年間の佐渡市湧水調査では、実に様々な湧き水に巡り会うことができ、また、古くから独特の文化が醸成されてきた島ならではの湧き水を巡る貴重な伝承に遭遇するなど、本当にすばらしい経験をすることができました。 湧き水には、往古より人間が生活していくうえで欠かせない存在として、その中に文化性・神秘性といったもの、例えば「水にはいのちがあり、再生力がある」本当にその歴史を感じることができ、現代の私たちが思いもつかない特別の存在として捉えられてきたことが明らかとなりました。 この小冊子は、4年間の調査結果を取りまとめた報告書をもとに、皆様から気軽に湧き水のある環境を訪ねていただけるよう佐渡市の協力を得て、湧き水に大きく関わる豊かな大地の遺産「佐渡ジオパーク」(平成 25 年日本ジオパークに認定)と関連づけながら、身近にある観光資源も含めて取りまとめたものです。是非とも本小冊子をかたわらに、自然の中で人知れず湧き出す恵みにふれるとともに、水の持つ歴史を感じていただければと存じます。 平成 27 年 3 月 31 日 一般財団法人 新潟県環境衛生研究所巻 頭 言 理事長 奧 田 雄 二 巻頭言
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