佐渡の湧き水 貴重な自然をたずねる
57/234

海府南部ジオサイトば ごれいちじんじゃにゅうざきかいすいよくじょう湧水の歴史 51 湧水は、段丘崖の上部付近から湧出しており、段丘面は水田が広がる台地になっています。「上野」とは、山の上に田や畑が作られる平らな土地のことを意味するとされ、林道を通って「上野」に農作業に向かう途中の祠から湧き出しているため、上野清水と呼ばれています。地元では、「いわしみず」や「地蔵さんの清水」とも呼ばれています。 湧水は 200 ~ 300 年以上前から湧出していたとされ、年間を通しての湧出量変化は少ないといわれています。昭和 36(1961)年頃に現在の林道が整備されましたが、整備される前は、段丘を駆け上がるような道であったため、農作業に向かう途中にある湧泉は、行き帰りに立ち寄り、のどを潤す場所でした。周囲には 3、4 個の腰掛け石が置いてあり、やす休ん場として疲れを癒すところだったそうです。のどを潤すのは、祠にある地蔵さんに願をかけ、地蔵さんに湧水を一杯かけて許しを請うた後とされていました。 北田野浦集落には御礼智神社があり、祭礼行事として実施される花笠踊りと小獅子舞は約 350 年前から伝わる伝統芸能で、佐渡市の無形民俗文化財に指定されています。  また、上野清水から約 2km 相川方面へ進むと、入崎海水浴場があります。長い海岸線を持つ入崎海岸は、夏は海水浴・キャンプ・釣りに訪れる人で賑わい、夜は沖合の水平線上に浮かぶイカ釣り船の漁火が幻想的です。 祠のお地蔵さんは信仰されており、清掃が行われたり、花などのお供えがされています。特に決まったルールはありませんが、気がついた人が湧水周辺の手入れを行っています。 相川町史編纂委員会(2002) 佐渡相川郷土史事典 p.223図 8-7 御礼智神社祭礼行事図 8-8 入崎海水浴場⑧ 上野清水 周辺情報保全活動文 献

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る