佐渡の湧き水 貴重な自然をたずねる
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国中平野・加茂湖ジオサイトみずかめ湧水の歴史89  アブン坂清水のアブン坂とは、山の名に由来するとされ、地元ではそう呼ばれています。 アブン坂清水のある久知河内集落は,天長 8(831)年に天長寺(今の長安寺)が開基されており、そのころには小規模な集落が形成されていたのではないかと推測されます。 集落は地下水位が低く、井戸を掘っても良い水が得られにくかったため、久知川を飲用水、生活用水として利用してきました。当時の水汲みは女性の仕事として行われており、朝と晩には炊事用として川水を汲み、水桶や水甕に貯めて利用していましたが、川が濁るなど苦労が多かったそうです。昭和 38(1963)年に簡易水道が設置されましたが、翌年の新潟地震により水源の湧出量が低下したことから、新たな水源としてアブン坂清水の湧泉が用いられるようになりました。集落から水源までは竹樋を通して導水していましたが、冬場などは竹樋が破損してしまい、維持管理が大変だったと聞きます。 アブン坂清水の近くには、「トキの森公園」があります。公園内にある、トキ資料展示館では、保護増殖、野生復帰の取組などの資料を多数展示しており、観察回廊からは隣接する佐渡トキ保護センターのケージにいるトキを観ることができます。また、トキふれあいプラザでは、大型ケージ内に自然に近い環境で飼育されているトキ(国指定特別天然記念物)の生態を間近で観察することができます。 現在、アブン坂清水の直接的な保全活動は行われていませんが、久知河内ホタルの会による集落内のビオトープづくりを通じて、ホタルの生息環境整備、河川環境の整備が進められ、鮭が遡上する環境の再生に取り組んでいます。 両津市誌編さん委員会(1982)両津市誌 町村編 上 pp.465-484 環境省 里なび 久知河内ホタルの会 (http://www.env.go.jp/nature/satoyama/satonavi/group/15.html)図 16-8 トキの森公園図 16-9 トキふれあいプラザ(トキの森公園内)⑯ アブン坂清水周辺情報保全活動文 献

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